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50歳からの初体験⑤
『登山を始めてみよう』


歳を重ねると、「初めて」って減っていきますよね。でも、世の中にはまだまだ知らないことがたくさんあるのも事実。そこでbjbでは、大人になって歳を重ねた今だからこそ、初めて体験するのにおすすめの“モノ・コト”をご紹介していきます。
新しい習いごとや趣味として始めるもよし、一度だけ体験してみるもよし。人生100年時代を過ごしていく日々の中で、楽しみの一つとなるきっかけになれば嬉しいです。
(bjb編集部)


普段、健康のために近所の散歩やランニングなどをされている方も多いと思います。

でも、登山となると、「きつそう」「あぶなそう」「何を用意したらいいのか分からない」というイメージを持っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか?

そこで、“初めての登山”について、登山ガイドの平加知也(ひらか ともや)さんにお話を聞きました。

高山植物チングルマの綿毛が揺らめく幻想的な風景

登山の魅力ってなんでしょうか?

何といっても、日常から離れ、自然の素晴らしさを堪能できることでしょう。同じ山を歩いても、季節と時間がもたらす変化に魅了されます。日本百名山に登ってみたい、写真を撮りたい、心身の健康のため、森林浴がしたい、お花や高山植物、新緑や紅葉を見たい、などきっかけは様々。山頂での山ごはんもとても美味しく、最近は自分で調理する人も増えています。下山後のお酒と温泉も格別です。

登山をするきっかけも魅力を感じるところも人それぞれだと思うのですが、共通している点は、自分の足で到達した頂上からの絶景を見て、達成感と感動が味わえることだと思います。さらに、それらを仲間と共有するという醍醐味も。

山でしか出会えない自然の美しさも楽しみの一つ

登山に最適な服装は?

春や初夏、初秋の低山であれば、動きやすい化学繊維系(ポリエステルなど)のものを選ぶといいですが、まずは、普段使っているスポーツウェアでも大丈夫です。

できれば撥水機能があるインナーを着用することをおすすめします。

吸汗性が汗冷えを緩和し、速乾性が肌をドライに保ち、におい対策にもなります。

ただ、標高が100m上がるごとに気温は0.6度下がり、さらに風が吹くと風速1mごとに体感温度が1度下がると言われています。このように、山は環境によって気温差が激しいので、薄手のウェアを重ね着し、こまめに脱ぎ着して体温調整をするといいでしょう。

一番上に着るアウターは、レインウェアで代用することもできます。 

最低限、必要な道具はありますか?

レインウェアとヘッドライトです。

緊急時に、自らを助けることになる、最低限の安全を確保するための道具だからです(もちろん他にも安全性を高める道具はたくさんありますが)。

あと、充電済みのスマホも必ず持参してください。

低山でも山の天気は変わりやすく、私も実際に、1日晴れ予報で降水確率0%なのに、雨に遭遇したことは何度もあります。

 たとえ真夏であっても、標高の高い場所で雨風に当たれば体が冷え、体温を奪われることで低体温症になります。防水透湿性のある上下セパレートのレインウェアがいいですね。

山は普段の生活の時間感覚とは違いますし、陽が落ちると真っ暗になります。何らかのトラブルや下山時間が遅くなった場合に両手が使え行動の助けとなるのがヘッドライトです。

スマホのライトは遠い距離を照らすには不十分ですが、スマホの通信機能「緊急SOS」に、事前に緊急連絡先を設定しておくと、現在の位置情報が発信されるので、緊急時の必須アイテムです。

また、YAMAPなどの登山アプリでは、地図を見ることができ、現在地を確認できるのでインストールをオススメします。

YAMAP

初心者が登りやすい山選びのポイントはありますか?

ネットやニュースでよく名前を聞く山は、登りやすい、つまり初心者向けの山であることが多いです(ただし、SNS情報は参考程度に)。さらに、人気のある山は、詳しい情報(写真説明付きなど)が手に入りやすい、登山道や標識が整備され歩きやすい、人がたくさんいるので安心、山頂やルート上に山小屋がある、などの利点があります。

登山口から頂上までの標高差が少なく、歩行時間が短い山から試すのがいいでしょう。また、旅行会社の登山ツアーの案内を見ると、山の難易度・技術レベル・体力レベルの記載があるので参考にしてみて下さい。

[最近登山を始めた登山初心者・ライター宇田の体験談]

「山選びの際、標高差500m前後、歩行時間2~3時間をイメージ。登山だと、歩行100mの距離でも、平地で300mくらいの感覚になることもありましたが、心地よく登れました。早めの出発、早めの下山を意識して、事前にルートや目印を確認しておき、登山道の案内板を頼りに進みました。ただ、今はネットやガイドブックなどで情報を入手できますが、最初に、山歩きの基本を経験者から学んだ方が安心して登れる、と思いました」

同じ山でも季節ごとに新しい魅力を発見できます

膝や腰に負担が少ない歩き方などはありますか?

けが予防のため、ストレッチをして体の筋肉をほぐしておきましょう。ザックを背負ってさまざまに変化する登山道を歩くことになるので、とにかくゆっくりバランスよく歩くこと、が大切です。ストックやサポーターを活用するのも効果があります。適度に休憩をし、体内の循環を促すために水分補給も忘れずに。

 日本三霊山 白山からの雄大な眺め 

登山を始めようと思っている方へアドバイスをお願いします。

登山は、ある程度の負荷が長時間かかることもあり、健康寿命を伸ばすためにも非常に有効な運動だと感じています。さらに、自然、写真、仲間との時間など楽しみも詰まっています。

また、登山は地道な行為の繰り返し。ときには失敗もあります。でも、それも含めて登山の魅力であり、経験を重ねて成長を感じられることも魅力のひとつなのだと思います。

まずは、アウトドア、登山用品専門店などが主催する初心者のための登山体験に参加してみる、登山サークルに入ってみる、または登山ガイドに依頼する、などで一度登山体験をしてみてはいかがでしょうか?是非一緒に山の楽しみを見つけていきましょう。

平加知也(ひらか ともや)さん

大阪府出身 日本山岳ガイド協会公認登山ガイド  
「初登山がいつだったか分らない程の山好きの家庭で育った根っからの山好き。クライミングやトレイルランニングも好きだけど、一番は地元六甲の地図にない道を辿ることです」

平加さんの登山記録はこちらからご覧ください。

YAMAP  https://yamap.com/users/248906

取材・文/宇田美和

東京で住宅・カメラ・育児・暮らしの編集や広告営業などを経てフリーランスに。インド在住時は日本人向け情報誌の創刊に関わり、現在はキャンプ・サウナ・庭づくりにはまっています。

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