一生現役。引退しない生き方
を提案するメディア

バブル時代を象徴する俳優・石田さん。

今も輝き続けるその秘訣を語っていただきました。

石田純一さんインタンビュー

やっと売れて安堵したバブル期、細部にこだわったドラマ作り

バブル期を象徴する俳優として思い出して頂けるのはとても光栄なことですが、バブル時代は自分の中ではやっと売れてホッとした、そんな時期でした。10年以上役者をやっていましたが、売れなかったんです。常に頭の中には「こういうものを作りたい」と具体的な構想があるのに売れない。辛かったですね。

大学の同期は一流企業でどんどん活躍して結果を出しているのに、自分は金なし、仕事なし…で、少し後悔したこともありました。その上、父は典型的な昭和の人間。「お前はダメだ」と日々けなされてばかり。そんな父から褒められたのはたった1回だけ。今でも思い出しますが、寒い冬の朝、皿洗いのバイトが1年以上続いていると伝えた時に「そうか…偉いな」と一言。苦労の時代が長かった分、父が生きているギリギリのタイミングで自分が出ているCMを見せることができ、とても喜ぶ姿を見た時は「間に合った!」と胸をなでおろしました。

そんなバブル時代でしたが、毎日華やかな雰囲気だったことは憶えています。当時のドラマチームの面々はみなさんクリエイティブで、本当にキラキラしてましたね。

「真理は細部に宿る」と言いますが、ドラマの部屋の作り方や衣装なども「お金がある」というよりも「趣味が良い、憧れ」を具現化しようと細かいところまでこだわっていました。とにかく良いものを作りたい一心で、みんなが現場で一丸となって取り組んでいたのを思い出します。

失敗はしっかり反省、バッシングも謙虚に受け止めて、次につながる努力を

世間の皆さんから言われること、聞こえてくることで反省すべきことも多々ありました。自分が失敗をしたことについて反省するところは真摯に反省します。ただ、そこでじっと止まってしまっても仕方ないし、失敗した自分を覆すことはできない。
もともとスポーツ人間なので、結局は日々努力するしかないんですよね。そして世間に「良いものを作ったなぁ」と思ってもらえるような作品を産み出すしかない、と思っています。

もちろん反省はしますが、起きたことにクヨクヨしすぎて、バッシングを過度に受け止めると心も体も害してしまう。 今の自分の生活で何が基軸になっているのかを確認して、反省すべきところは反省して、あとはポジティブに発想を転換して未来に向かって努力していくしかない、と考えるタイプです。それで過去の自分から生まれ変われたら良いなぁと思っています。

やりたかったことに、今から挑戦しませんか?

講演などでもお話ししているのですが、バブル世代の方々にお伝えしたいことは「今までやってみたかったのにやれなかったことがあったら、今からやりませんか」ということ。一言でいえば「挑戦しましょう」ですね。

一例として、僕は、歴史上有名な伊能忠敬の話をよくします。彼は千葉の造り酒屋に婿養子に入って、傾きかけていた経営を劇的に改善させたのが58歳くらい。そこで「家業を立て直して一定の役割は果たしたので、これからは自分の好きなことをしたい」と、自身がやりたかった天文学の研究を始めるんです。そして17年かけて日本全国を測量して「大日本沿海興地全図」を完成させるという偉業を成し遂げました。

だから、もし定年が人生の一つの転機だとしたら、そこから挑戦してみたかったことを実行に移してみましょうよ、と声を大にして言いたいです。成功する、しないは置いておいて、挑戦することに意味がありますよね。それが結果的に気持ちも若くいられる秘訣なのではないでしょうか。

実は、僕も脚本を書いて監督をしたいという目標があり、これから挑戦します。俳優の道に入った20代の頃から持っていた夢でした。その夢を形にすることに今すごくワクワクしているところです。そんな68歳がいてもいいじゃないですか、一度きりの人生ですから。

日常のたわいもない幸せを感じられるバラ色の時間

社会全体に閉塞感がありバラ色だけではない世の中ですが、自身をバラ色、つまり幸せにする方法は持っていますよ。それって心の持ち方次第だと思うんです。青空を見て「今日も気分がいいな」と思えたら、それが幸せ。

現在5歳の娘を幼稚園に送ることが毎朝のルーティンになっていますが、それも日々の幸せを感じる時間。娘が手を握って歩いてくれる時なんて、可愛いの一言、まさにバラ色の時間です。

また、幸せの一つとして人との繋がりはとても大切です。友人、親戚、地域の繋がりなど種類は様々ありますが、その中で「家族」は強い繋がりの一つ。子どもができたことで、彼らと人生を共にしていくんだと改めて覚悟ができ、自分の人生の中に新しい章ができた感覚も、幸せですね。日常の中でたわいもない幸せはそこかしこに転がっているので、たくさん幸せを感じられたら絶対お得ですよ!

生き生きと歳を重ねていくために体、頭、心の3つを動かす

元気に歳を重ねていくこと、つまりウェルビーイングのためには体、頭、心の3つを動かすことが重要ではないでしょうか。

「体を動かす」は、つまり運動すること。僕は毎朝5キロ走っています。その後に娘を幼稚園に送ります。さらに、9歳の息子が野球をしていて、野球指導に付き添うとさらに走ることになり、「きつい、しんどい」と思うこともしばしば。でもそこで運動をやめてしまうと一気に老け込むこともあるようなので、何とか続けています。医者の友人が「運動は免罪符にはならない。過信しないように」と忠告してくれるので、食事や酒量にも気をつけています。タバコは40代できっぱりやめました。そうやって健康に気をつけて過ごしていると「40代の頃より今の方が肌がキレイ」と言ってもらえることがあり、驚きます。

「頭を動かす」は、仲間と会う、講演会に出かける、カルチャースクールに通うなど、どんなことでもいいので積極的に外に出ていくことです。読書もおすすめですね。近所や、仕事先でもよく本屋に行きますが、良い本にたくさん出会えます。モノってどんなに良い物でも上限があるけれど、知識は無限です。

「心を動かす」は、何かに一生懸命取り組むのもいいし、アイドルでも俳優でも良いから恋することかな。ドキドキする気持ちはホルモンバランスに良い影響を与えるといいますからね。そして、社会に何らかの貢献をしたり、ボランティアで誰かを助ける活動をすると、清々しい気持ちになったりします。

幸せの3原則のでもある「心と体の健康」を叶えるためには、どんな心持ちで生きるかがとても重要。そのためにも体、頭、心の3つを適度に動かし続けていきたいですね。

世の中は動き続けています。その中で我々60代の人間が何も変わらずに化石のような存在になってはいけない。もちろん大切なものは変えずに、だけど自分たちも転がる石のように変化していきたいです。そんな親の背中を見て、子ども達が何かを感じ取ってくれたらうれしいですね。

1954年東京生まれ。
趣味はゴルフ、英会話も堪能。 文化放送「斉藤一美 ニュースワイドSAKIDORI!」隔週木曜日レギュラーコメンテーター

取材・文/Umi
撮影/岡本卓大

1件のフィードバック

この「読みもの」をシェアする