バラードの名曲『最後の雨』でブレイク
音楽を通して“ロマンティック”を届けたい
中西保志さんインタビュー
1990年代の名バラードといえばこの曲。『最後の雨』でブレイクした中西保志さん。透明感のある声と圧倒的な歌唱力で、今なお男女問わず幅広い世代に支持されています。発売以来、多くのミュージシャンにカバーされてきた『最後の雨』ですが、大ヒットするまでの秘話や現在のこと、これからのことについても伺ってきました。
音楽は大好きだったけど、ずっと聴く側だった。デビューのきっかけは?
僕の親父が村田英雄さんの大ファンだった影響から、僕は小さい頃から浪曲や洋楽の声がきれいな人って素晴らしいなって思っていたんです。だから、中学生ぐらいの時にフォークソングやハードロック系の音楽が流行ったけど、僕はやっぱり声のきれいな人に心を動かされるというか。そういう意味では周りとはちょっとズレていたのかもしれないですね。
音楽は大好きでずっと聴いていたけど、バンドを組んだりはしていなくて、大学卒業後はアパレル関係の会社に就職。でもやっぱり音楽をやりたくて、会社を辞めて家庭教師や塾の講師をしながら、趣味的に音楽活動をしていたんですよね。当時の僕は歌えてさえすればよかったから、将来どうするとか考えてなくて、なんかふわ〜っとした感じで(笑)。
でも自分の立ち位置を知りたいなとか思い始めて、あるコンテストに初めて出場したら、なんと優勝したんです。後日、当時玉置浩二さんが所属していたレコード会社から連絡があって、それで事務所に入って、上京したのがデビューのきっかけです。
『最後の雨』がヒットするまでの秘話
『最後の雨』はデビューアルバムの中の一曲だったんです。シングルカットしたんだけど、実はカップリング曲の方がメインで(笑)。メインの方はオリンピックのテーマ曲にもなったんだけど、オリンピックが終わった途端にぱったり売れなくなっちゃって。
それで、やっぱり『最後の雨』を売り出そうということになり、当時全国のカラオケ店や有線放送に営業したんだけど、そう簡単に採用されないんですよね。それでプロモーションビデオが大事だからって、映画監督さんに絵コンテを描いてもらって、撮影も大掛かりなセットで本格的に制作したんです。16ミリのフィルムに雨が降っているのを表現するためには大量の水が必要だからって、真冬に消防車みたいなのを用意して、僕は全身に水を掛けられながら歌わされたり(笑)。それで完成したのが、あのプロモーションビデオなんです。
爆発的に売れたとかはなくて、有線放送でリクエストが入ったりして徐々に売れていった感じですね。当時、ディレクターも宣伝担当もみんな駆け出しだったけど、とにかく当てたい!という執念で、あの一曲にみんなの思いを凝縮させた感じ。
EXILEのATSUSHIさんなど多くの人がカバー、ドラマの挿入歌にも。世代を超えて愛される曲に
よく中西保志の『最後の雨』って言われるんですけど、曲を作った人がいて、歌う人がいて、さらに泣いたり笑ったり受け取ってくれる人がいないと、音楽って成立しないんですよね。だから『最後の雨』も僕だけのものじゃなくて、それはみんなのものだと思うんですよ。
もちろん、僕が一番長くこの曲と付き合ってきたという自負はあります。でも、プロの人がカバーしたり、誰かがカラオケで歌ったり、そうやってみんなの共有物として広がっていく。今でもこうして色んな方が様々な角度からあの曲をカバーしてくれる。世代を超えて歌い続けられていることは、とても嬉しいことだなと思います。
現在の活動は?
2年前に事務所を辞めてフリーランスになりました。不思議なもので、その頃からまたテレビに出演する機会が少しずつ増えてきていて。でもテレビは尺があるから、例えば4分40秒の曲を2分半で歌わないとで、バラードを細かく切り過ぎると訳わかんなくなっちゃうから難しいなぁって。あ、テレビを批判しているんじゃなくて、僕自身のレベルをパワーアップしないといけないってことです。
あとライブも定期的にしています。「大・文化祭」と称して、自分で企画して自分のためにやっているライブ。売れる・売れないだったり、やりたいこと・求められることって違ったりするじゃないですか。だから全部自分の責任で自分のやりたいようにやろう!って。
僕はただ音楽が好きで、ど素人でこの業界に入ったので、逆に音楽の色んな枠組みを設けたくないし、音楽にある可能性を探りたいなと思っています。だから、僕のライブはフォークにも洋楽にもどんなジャンルも収まらない。自分のコアな部分を凝縮したのがこのライブです。
人生100年時代、
まずは声が健康であること
まずは健康でいたいですね。僕にとって、健康の一番のバロメーターは声だと思っているので、今こうして歌えていることが健康だっていう証拠。
どういう発声練習してるんですか?ってよく聞かれるけど、体の一部分(声)だけを鍛えてもダメなんですよね。もちろんプロとして技術的に発声練習はするけれど、自分自身の体が健康であることが何よりも大事かなと。そうすれば自然といい声って出るんですよね。
最近、歌っていうのは“言語以上テレパシー未満”みたいな位置にいるんじゃないかと思っていて。例えば、ただ歌っているのを聞いて、自分には全然関わりのない歌詞であってもポロポロと涙が溢れてくる。歌って、同時多発的に色んな人に対して影響を与えることができる。これってテレパシーみたいだし、すごくロマンティックなことだなぁって。そんなロマンをこれからも誰かに届けていけたらなぁと思います。
INFORMATION
[bjbCOLLECTION2024 Dec.]
12月に開催するbjbCOLLECTIONに中西保志さんが出演決定!
『最後の雨』をはじめ、クリスマスソングなど数曲を会場で歌っていただきます。
他にもバブル時代から今も第一線で活躍する人気芸能人が会場を盛り上げます!
ぜひご参加ください。
<入場・観覧は無料です>
※要事前お申し込み
イベントの詳細&チケットのお申し込みはこちらから!
撮影/矢部ひとみ
文/門司智子