嫌われタレント№1から50代で再ブレイク
死に物狂いで頑張ったからこそ、今がある!
ルー大柴さんインタビュー
「藪からスティック」「根耳にウォーター」など英語を交えた“ルー語”で大ブレイクしたルー大柴さん。嫌いなタレント、抱かれたくない男など嫌われタレントの代表格として活躍してきましたが、40代になってテレビから徐々に姿を消し、売れない時期を乗り越え、50代で再ブレイク。70代になったルー大柴さんに、人気絶頂期のこと、売れなかったときのこと、そして現在のことなどを伺ってきました。
「トゥギャザーしようぜ」「藪からスティック」などの “ルー語”はどうやって生まれた?
ルー語のルーツは、私の父なんです。日本人なんですけど4か国語を喋れたので、チャイルドの頃から、例えば普通だったら「このバナナ食べる?」と言うところを、「このバナナ、イートする?」と日本語と英語をトゥギャザーするのが日常会話だった。ルー大柴の「ルー」も父が名付けたもので、本名の「とおる」の「る」をとって、小さい頃から「ルー」と呼ばれていたんです。
あと、高校時代のガールフレンドがアメリカンスクールに通っていたから、会話は英語と日本語だったし、高校卒業後はひとりでヨーロッパを放浪していたので、ロンドンで英会話スクールに通ったりヒッチハイクで北欧を回ったり。だから、幼少期からなんとなく英語に触れる機会があって、英語と日本語を交えて話すことはごく自然なことだったんですよね。
ブレイク直前には夢を諦めて、バイト三昧の日々も…
ブレイクしたのは30代半ばくらいだったから、既に結婚していて子どももいました。10代の頃からずっと俳優を目指していたけど全然売れなくて。母親に「女房と子どもがいるのに、10年やって目が出なかったんだからもう辞めなさいよ」と言われて、さすがにもう諦めよう、と。アルバイトをしながらこれから何をしようか? とか考えていたのがちょうどバブル絶頂期の頃。
当時はアルバイトの仕事もたくさんあったし、バイト代だけでどんどんお金が入ってくる。だから、ティッシュ配りに火災報知器の点検、結婚式の司会や下着のモデルなどありとあらゆるバイトをしましたよ。
でも不思議なことに、夢を諦めた途端に夢が追いかけてきたというか、少しずつ仕事が入ってきたんですよ。テレビに出るようになってからも、しばらくはバイトも続けていたので、路上でティッシュ配りをしていたら「あなたルーさんでしょ?」と声かけられたりして、「いや、違います」って。そんなこともありましたね(笑)
“嫌いなタレント№1”で大ブレイク。そして低迷した40代
かつらのCM「トゥギャザーしようぜ」で一気に知名度があがると、それからは寝る暇もないくらい忙しかった。
でも売れてたとはいえ、「嫌いなタレント№1」「抱かれたくないタレント№1」と嫌われタレントの代表格。俳優を目指していたのに、まさかあんなキャラクターで売れるなんて、自分でもびっくりでしたけどね(笑)。
でもピークを過ぎた40歳の頃から徐々に仕事が減っていって、「落ちてきたな…」というのは自分でも実感しました。英語交じりのトークとテンション高めの「ルー大柴」というキャラクターに世間は飽き飽きしていたし、自分としても疲れ切っていましたね。
50代で再ブレイクしたきっかけとは?
転機となったのは、マネージャーとの出会いです。売れない時代は3番手4番手の舞台の役者をしたり子どもと遊んだりの毎日で、焦ってはいるけどどうしたらいいのかわからなかった。そんな時に新しいマネージャーにこう言われたの。
「あなたの時代は終わったんです。もうルー大柴のことなんて誰も知らないですよ。今のままのスタンスでやっていたら、このまま本当に世間から消えますよ。これで終わりかもしれないけど、もし変われるというなら、チャンスはあるかもしれません」と。当時30歳くらいの若いマネージャーだったけど、これまで私にそういうことを言える人っていなかった。
なんだこいつ、と思った半面、彼の言っていることは理にかなっているなと思ったんですよね。台本を読まなかったり適当にしたり、怠慢になっていたところがあったなと自分でも反省し、“ルー大柴の大改革”と掲げて、とにかく一つひとつのことにきちんと取り組むようにしたんです。
当時としては早い方だったと思うけどブログも始めたし、新人みたいにマネージャーと一緒にテレビ局の挨拶回りもしましたよ。そしたら、「ルー大柴」を知らない大学生や高校生に英語を交えたルー語がウケて。NHKの『MOTTAINAI』という歌を歌わせていただいたんですけど、これが見事に当たっちゃったんだよ。
それは、50歳過ぎてから死に物狂いでやったけど、今のマネージャーがいなかったら、今のルー大柴は間違いなくなかったと思います。マネージャーが自分に足りない部分を補ったり助けてくれたり、だから今の自分がある。運命共同体というか、そういう人と出会えたっていうのは本当にラッキーだったと思います。
人生100年時代、これからどう生きていきたい?
僕らがヤングのときは人生50年だった。でも今70歳だから、もう20年長く生きてる。そして今もこうして仕事してる。Why?なぜ?って思うけど、だってやっぱりこの仕事が好きだもん!
一度きりのライフなんだから楽しく生きたいし、そのためにはみんなのスマイルがほしいと思うわけ。たとえたったひとりでも、元気が出るとか面白いとか笑ってくれる人がそこにいるのなら、それだけで私はすごく幸せなの。
だから、まだ自分にできることが、できる可能性があるのなら、それはできる限りやっていきたいなって思っています。
同世代の方にメッセージを
やっぱり身体が元気なうちは色んなことに、自分が今までやりたかったことに挑戦したいですよね。それで、人生何年って区切るんじゃなくて、とにかく毎日を楽しみながら生きて、息絶えればいいんじゃないかなと。
私はね、もちろんもう少し長生きしたいとは思うけど、いつ死んでもいいと思ってるの。
いつ死んでもいいから、とにかく死ぬまで精一杯生きる!
そういう覚悟で、もう少し頑張りたいなと思っています。
INFORMATION
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撮影/矢部ひとみ
文/門司智子