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韓国社会を反映したお仕事ドラマ おすすめ5選

今回ご紹介するのは、韓国ドラマにありがちな記憶喪失、交通事故、出生の秘密、ドロドロの復讐劇といった要素が入っていない5作品。
会社員、教師、検事、警察官などの職業を持つ人の生活を通し、韓国の職業事情や働く上での苦悩、喜び、面白さなどが伝わってくる職業ドラマです。それぞれのステージで自分を持ってしっかり生きるということの大切さを描き、静かな感動に浸ることができます。

ミセン~未生~

(2014年、20話)

引用:公式HP

韓国の人気WEBコミックを映像化したもので、社会現象まで生み出したレジェンドドラマ。私は最初に見たとき、「こんなドラマもあるんだ!」と新鮮な感動を覚えました。

幼少期から棋士を目指し、ほかのことにはまったく疎い主人公が、父親の死をきっかけに棋士への道をあきらめて会社員になります。しかし、学歴もなく、会社員生活を送ったことがない主人公にとって厳しい毎日が続きます。まわりは、思った通りの結果が出せず悩む新人、活躍する難しさを実感する女性、愛想だけで生きている世渡り上手な人、など十人十色。日々、仕事に向き合い苦労する姿に自分を投影して感情移入したり、許せない言動に反発したり…。

主人公役のイム・シワンはK-POPグルーブ「ZE:A」のメンバー。頼りなさげながら、機知にとんだアイデアで成長してゆく姿に、見る側も喜びを感じ、応援したくなります。上司役のイ・ソンミン、優秀な新入社員のカン・ソラやカン・ハヌルなど個性豊かな俳優たちの演技にも注目です。
ちなみに、ミセン(未生)とは、碁盤上にある石が完全には生かされていない状態のことで、その対語はワンセン(完生)。タイトルは、まさに主人公の境遇を表す言葉となっています。

<ストーリー>
棋士になるべく努力をしてきた26歳のチャン・グレ(イム・シワン)。父親の死後、その道をあきらめたのですが、大学にも行けず、バイトに明け暮れる日々を送っていました。心配した母親のつてで大手総合会社のインターンになるのですが、それまでまともな社会生活を送ったことがなかった彼はコピーの取り方さえ分からず、周囲の冷たい視線を感じていました。同期で入った紅一点のアン・ヨンイ(カン・ソラ)は仕事ができるがゆえに男性上司に疎まれる存在。同じく同期のチャン・ベッキ(カン・ハヌル)は優秀ながら望んだ部署に配置されず悩める日々を送るなど、周囲の人々もそれぞれに悩みや不満を持ちながら会社員生活を送っているのでした。
各話ごとにいろいろな立場の人々の悲哀や喜び、希望などが描かれ、多くの人々の共感を得ました。何度見ても感動できるヒューマンドラマです。

ライブ~君こそが生きる理由~

(2018年、18話)

これまでも警察官が登場するドラマはたくさんありましたが、本作は事件中心のストーリー展開ではなく、交番で働く警察官の毎日にスポットを当て、人間ドラマをおもしろく、丁寧に描いています。実力派女優のチョン・ユミ、バラエティ番組でも人気のイ・グァンスがリアルな警察官を好演。脚本は「大丈夫、愛だ」「その冬、風が吹く」などのヒットメーカーであるノ・ヒギョンとあって、見逃せない作品です。

<ストーリー>
女性で地方大学出身ということで就職できずにいたジョンオ(チョン・ユミ)は、自分を育ててくれた母親のために父親から借金をしてまで警察官を目指します。一方、ミネラルウォーター会社のインターンとして働くサンス(イ・グァンス)は正社員を夢見ていましたが詐欺にあってしまいます。被害届を出しに行ったサンスは警察で働く人々に憧れ、自分も警察官になることを決意。その後、2人は熾烈な競争を経て警察学校を卒業。韓国で事件や事故が最も多く発生するというホンイル地区への配属が決まります。憧れと期待をもって警察官になった2人を待っていたのは想像以上の過酷な仕事。そんな日々の中で成長していく姿に希望が見えてきます。

検事内伝(検事ラプソディ~僕と彼女の愛すべき日々~)

(2019年、16話)

検事を扱ったドラマは多く、優秀で華やか、クセが強いなど目立つタイプの検事であるケースが多いのですが、このドラマの主人公は地方にいるパッとしないサラリーマン検事。そんな冴えない検事を演じるのは、いつもはかっこいい役の多いイ・ソンギュン。ソウルからエリート検事がきたことで平穏だった支庁全体が騒がしくなります。原作は実際に検事だったキム・ウンのベストセラーエッセイとあって、それぞれの生き様をリアルに描き出しています。

<ストーリー>
故郷ジニョンの検察庁で働く検事イ・ソヌン(イ・ソンギュン)は野望もなく、小規模な業務を淡々とこなす日々を送っていました。同僚の検事たちもみな同じような感じ。そこへ中央地検からエリート女性検事チャ・ミョンジュ(チョン・リョウォン)が赴任してきます。優秀な成績の彼女がなぜ、こんな田舎の検察庁へやってきたのか?しかも大学の同窓だったソヌンとミョンジュは、ミョンジュが先に司法試験に合格するという気まずい過去を思い出しつつ、激しく対立するのでした。この2人、火花を散らしながらも分かりあえる日は来るのでしょうか? 検事たちの生活にリアリティを与えているのが食事のシーン。朝食、ランチ、夕食の場面を通して、チャンジャ麺、韓国刺身、あなご汁など様々な食事をしているシーンが丁寧に描かれているので、モッパン(食事)ドラマとしても楽しめます。

ブラックドッグ

(2020年、16話)

「ミセン~未生~」の教師版とも言われるヒューマンドラマ。雇用形態による格差、教えること以外にやるべきことが多くサービス残業の日々、保護者からのクレーム対応、良かれと思ってやったことのしっぺ返し…。新米教師として頑張るコ・ハヌルの毎日は、きっと普通にいるどこかのだれかの姿。
きっとどんな教師も「真の教育者とは?あるべき姿とは?」を模索しながら毎日を送っているのではないでしょうか。

<ストーリー>
塾講師のアルバイトをしながら教師を目指す29歳のコ・ハヌル(ソ・ヒョンジン)。テチ高校の臨時採用で教師になり、張り切って新米教師生活をスタートさせます。ところが学校に行くと“コネ採用”という噂が広がり、居場所をなくし、退職をも覚悟したハヌル。そんな時に声をかけてくれた先輩教師のソンスン(ラ・ミラン)の言葉に決意も新たに真の教師になるべく奮闘を始めるのでした。
夢を持ってスタートさせた社会人生活の中で心が折れそうになった経験をした人にはリアルに届くシーンや言葉。登場人物たちの心の些細な動きを丁寧に描いた本作に、私は共感する部分が多かったです。

ストーブリーグ

(2020年、16回)

引用:公式HP

題名のストーブリーグとはプロ野球のシーズンオフに行われる選手の契約更新やトレードなど、戦力増強に伴う活動のこと。本作では弱小チームが立ち上がる姿を裏方スタッフの視点から描いていきます。野球に関心がなくても、ルールを知らなくても、十分楽しめます。
中心となってチームの再生を進めるゼネラルマネージャー(GM)に扮するのは、コメディーからシリアスなものまで見事な演技を見せてくれるナムグン・ミン。本作では一見、無表情で冷たい男を装いながら、実は内に熱いものを秘めた男を演じています。一方、誰にも負けないチーム愛を発揮しつつ、GMをサポートする運営チーム長を子役出身の演技派女優パク・ウンビンが熱演しています。

<ストーリー>
プロ野球球団「ドリームズ」は様々な問題を抱える万年最下位球団。そんなチームを甦らせるべく新任のGMに抜擢されたペク・スンス(ナムグン・ミン)。シルム(韓国相撲)、ホッケー、ハンドボールなどを優勝に導いた経験はあるものの、野球に関しては全くの素人。そんな彼に何ができるのかとスタッフも冷たい視線を送っていました。実はそんなスンスをGMとして雇った球団オーナーにはある思惑が…。スタッフが考えてもいなかった改革を始めるスンス。徐々に変わっていくチーム。そしてついに!最終回には「この先が見たい~」と思わせる展開が待っています。

取材・文/ノン鳥越

1954年福岡生まれ。2002年の初渡韓後、韓国のいろんなものにはまる。コロナ禍前は、2カ月に1回のペースで渡韓。これまで見た韓国ドラマは600本以上、映画は500本以上。

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