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50歳からの初体験⑥
『着付けを習ってみよう』


歳を重ねると、「初めて」って減っていきますよね。でも、世の中にはまだまだ知らないことがたくさんあるのも事実。そこでbjbでは、大人になって歳を重ねた今だからこそ、初めて体験するのにおすすめの“モノ・コト”をご紹介していきます。
新しい習いごとや趣味として始めるもよし、一度だけ体験してみるもよし。人生100年時代を過ごしていく日々の中で、楽しみの一つとなるきっかけになれば嬉しいです。
(bjb編集部)


「着付けを習ってみたいけど、なんだか難しそう、私にできるかしら?」と思って、今まで諦めてきた方、案外多いんじゃないでしょうか? 

子育てが落ち着いて時間とお金に少し余裕ができてきたから、何か新しいことでも始めようかな?と、50歳前後で着付けを習い始める方が多いそうです。

今回は、現役講師として多くのお弟子さん、学生さんを指導する「山野流着付け集団 中野組」代表の中野玲子先生に着付け教室についてお聞きしました。

山野流着付け集団 中野組 代表 中野玲子さん

1946年生まれ。講師歴40数年。自宅での着付け教室のほか、京都、姫路、和歌山などの美容学校で講師を務め、多くの着付け師を輩出。プロの着付け師や美容師への着付け指導も行う。また、中野組(現在56名在籍)では、毎年200名前後の新成人の着付けを手がける。

山野流 皆伝講師
一般財団法人国際美容協会 関西支部専任講師
厚生労働大臣感謝状授与
山野流全国大会コンテスト審査委員 奥伝査定員

山野流着付け集団 中野組HP
https://www.nakanogumi.net/
https://www.facebook.com/yamanoryu.nakanogumi/
https://www.instagram.com/nakanogumi_kitsuke/

初心者でも大丈夫。まずは浴衣の着付けから

私の教室にも50歳前後から習いにいらっしゃる方が多いですね。着付けが初めてという方もいらっしゃれば、ほかの流派を習っていらっしゃった方が再び学びたい、など動機は様々です。

山野流着付けの特徴は、特殊な用具を使わないという点と、鏡を見なくても美しい着付けができるようになるしっかりとした技術が身に付くことです。日本語と英語、二ヵ国語で書かれた教科書があるというのも大きな特徴だと思います。

季節に関係なく、まずは浴衣の着付けからスタートします。浴衣は着物より工程が少ないですが、着付けの仕方や大事なポイントは同じなので、浴衣が着付けの基本となります。

まずは浴衣の畳み方、腰紐のセットの仕方など、着付けをスムーズに行うために準備の仕方を学びます。口頭で工程や注意すべきポイントを説明しつつ、手取り足取り丁寧に指導してもらえるので、初めてでも心配なく浴衣の着付けをマスターできます。
浴衣を羽織る前に、ウエスト周りにタオルを巻くなどして身体の凹凸をなくすことで浴衣に皺ができにくくなります。
一文字の帯結び。自分で結ぶ場合は、体の前で帯を結んで形づけをしてから後ろに回します。

初めての方でも15~ 20分で綺麗に着付けが完成します。「私でもできた~!」「ステキ!」「可愛い~!」と少女のように目をキラキラさせている姿は何度見ても嬉しいものです。こちらまで笑顔にさせてもらえ、指導者冥利に尽きます。

楽しいおしゃべりタイム & 着物でお出かけイベント

私の教室では、お稽古が終わった後に自由参加で、お茶をしながらの“おしゃべりタイム”を設けています。20代、30代の生徒さんもいらっしゃるので、世代間の交流もできておもしろいと思います。

私自身、自宅の教室にみえるお弟子さんだけでなく、美容学校で若い学生さんたちとコミュニケーションをとる機会が多く、それが元気の源だと思っています。

私の教室も、単なる習い事だけではなく、コミュニケーションの場になればいいなと考えています。

自分で着物が着られるようになると、着物を着てお出かけしたくなるんですよね。

そこで、生徒さんたちの発案で始まったのが“着物でお出かけ”イベント。春は京都へお花見、夏は川床、秋は紅葉…と、今では30年以上続く中野組恒例のイベントにまで発展しました。コロナ禍で近年は開催していませんが、今年は久しぶりに再開できればと思っています。

また、昔は、国内のホテルをはじめ、外国でも着物ショーなどをしていました。同じ趣味をもつ者同士の交流は、実に楽しいものです。

どれくらいの期間で着られようになりますか?月謝は?

着付けの流派や教室によって、料金体系や習得期間は様々です。1972年(昭和46年)に美容家の山野愛子先生が創設された山野流(現在は山野愛子ジェーン宗家が二代目)を受け継ぎ、私が代表を務める山野流着付け集団 中野組の場合を一例としてご紹介します。

・お月謝:8,000円(1回2時間、月4回。※1,000円/時間という計算で回数、お稽古時間のアレンジは可能。教室ごとに講師と要相談)
※中野組は入会金不要ですが、入会金の有無は教室によります。

・初級編(自装による着物/浴衣・小紋の着付け&細帯・一重太鼓・二重太鼓の帯結びなど):3ヵ月で修了(お稽古総時間24時間)

・中級編(自装による着物/振袖・留袖の着付け&変わり結びなど):3ヵ月で修了(お稽古総時間24時間)

※初級編(山野流では初伝と呼ぶ)、中級編(中伝)それぞれ教科書代3,000円程度必要。そのほか、和装肌着や腰紐などの小物は各自持参、無い場合は購入可。着物や帯は貸出しあり(教室によって異なるので事前に要確認)

山野流は一般財団法人ということもあり、広告などを出さず、口コミによる集客が大きいことから、かなりリーズナブルな価格帯です。着付け教室と謳いつつ、実際は高額な着物を買わされるといったところもあると聞いていますので、注意が必要です。

気になる教室や流派があればトライアル期間の有無を確認し、通っていらっしゃる方たちの口コミを参考にされるのも良いかもしれませんね。

着付けの資格は一生モノ。生涯現役も夢じゃない

初級、中級を経て、「資格を取りたい」となった場合は、どれくらいの期間と金額がかかるのか、気になりますよね。前述同様、山野流を例にご紹介します。

・上級編(着付け講師・着付け師としての資格取得):6ヵ月で修了(査定含め全12回・1回5時間程度)

授業料(教科書代・許状申請料・表札代含む)約30万円

お茶、お花、お琴…など、日本の伝統を継承する資格を取得するためには、高額な授業料かつ申請料がかかることは事実ですが、歴史ある伝統を守り、継承する一員として自分の名前が記された文部科学省認定の看板をいただくわけですから、決して高くはないと私は思います。

山野流の資格取得コースでは、初伝、中伝で習ったカリキュラムをより深く学び、さらに他装の着付け、袴や男性の着付けのほか、メイクや身のこなしなど、実技と座学でみっちりお勉強します。

山野流では、このコースを奥伝(おくでん)と呼びますが、その名の通り、奥義を伝えるカリキュラムになっています。

資格取得後は看板を出して自身の教室を開くことができるのはもちろん、着付け師として成人式や結婚式、着物ショー、さらに演歌歌手、有名モデルやタレントの着付けの依頼を受けるなど、自分次第で活躍の場を広げることも可能です。

着付けは、私のように年齢を重ねても自宅にいながらにして教えることが可能なので、一生続けることのできる職業とも言えるでしょう。

資格を取ってからも、みなさん、よりスピーディーに美しく着付けるためにお稽古に励まれています。私自身も、技術と知識を提供するためには、一生学び続けないといけないと思っています。

これからも、より多くの方に着付けの楽しさと、着物を装うことの素晴らしさを伝えていければと思います。一緒に着付けLIFE、着物LIFEを楽しみましょう♪

~着付け教室に通う生徒さんの感想~

「浴衣くらいは自分で着られるようになりたいな、と軽い気持ちで始めたはずが、どんどん欲が出てきて(笑)。家に祖母の古い着物がたくさんあるのでせっかくなら着物も…と。今ではやめなくて良かったと思っています」坂上美由紀さん(47歳)

「息子が今28歳なので、この先結婚して子どもができたら、孫の七五三の時に着付けをしてあげられたらいいなと思ってます」Aさん(50歳)

「外国人のお友達が結構いて、みんな着物を着てみたいというので、着せてあげて一緒に出かけたりすると、とても喜んでくれるんです。着付けを習っていて良かったなと思う瞬間です」Cさん

「学校卒業と同時に、花嫁修行の一つとして習いなさい!と母に言われて習い始めましたが、結婚、出産後は時間がなくて着付けは一切していなくて…。それが50歳になった頃にたまたま、美容師のお友達に着付け師として仕事を手伝ってほしいと言われて改めて習い始めたんです。子育ても落ち着いて新たな趣味ややり甲斐が見つかりました」Wさん(57歳)

「これまで趣味と言える趣味がなかったのですが、着付けを習い始めて、胸を張って趣味と言えるものができて嬉しいです。普段、洋服だと無難な色ばかり選んでしまいがちなんですけど、着物だといつもと違う色や柄にも挑戦できて、新しい自分を発見できるのも楽しいです」近藤礼佳さん

「40代半ばで、仕事や時間にも余裕ができて、和事に興味を持ち始め、まずお茶を習い始めました。お茶の時には着物を着るので、自分で着られるようになりたいなと思い、50歳になった頃に着付けを習い始めました。今では自分で着物を着て、お茶のお稽古やお茶会にも行けますし、着物で歌舞伎観劇なども楽しんでいます」Mさん

取材・文Satomi

1972年生まれ。大阪出身&在住のエディター兼ライター兼着付け講師。会社員時代は旅行情報誌の編集に従事。出産を機に退職し、フリーに転身。現在は主にスポーツや観光系記事を手がける。好きなものは、藤井風くんと、馬刺しと、スポーツ観戦。特にバレーボールはやるのも、観るのも好き。

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